過活動膀胱とは?
まずは症状や原因、治療法を知っておきましょう

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過活動膀胱とは?まずは症状や原因、治療法を知っておきましょう

もし、突然の我慢できない尿意を感じて(尿意切迫感)、さっき行ったばかりなのに何度もトイレに行ったり(頻尿)、トイレに間に合わず尿もれしてしまう(尿失禁)などの症状があるなら、それは過活動膀胱かもしれません。

過活動膀胱は、仕事や家事、旅行や観劇等といった趣味の妨げになり、日常生活の質(QOL)への影響が大きいため、その症状に悩んでいる人は少なくありません。

まずは過活動膀胱について正しく知ることから始めてみませんか?

過活動膀胱とは

過活動膀胱では、「尿意切迫感」「頻尿」「夜間頻尿」「切迫性尿失禁」といった症状がみられます。膀胱が異常に収縮したり、知覚過敏になったりすることが原因ですが、それを引き起こす要因は様々です。

過活動膀胱の症状は、どの年齢でも起きることがありますが、国内で行われた調査1)によると、その割合は40歳代では5%程度ですが、80歳以上になると35%を超えており、50歳代から年齢が上がるにつれて増える傾向にあります。

この調査結果から、過活動膀胱の症状がある人は現在では推定で1000万人超とされます1)2)

  • 1)本間之夫 ほか:排尿に関する疫学的研究.排尿に関する疫学的研究. 日本排尿機能学会誌 2003; 14: 266–277
  • 2)日本排尿機能学会/日本泌尿器科学会:5 疫学 過活動膀胱診療ガイドライン[第3版],2022;150-151

過活動膀胱の症状

過活動膀胱において基本となる自覚症状は「尿意切迫感」です。冷たい水にさわったときや、立ち上がったときに不意に起こる、抑えきれないような強い尿意で、自分でコントロールできずトイレに間に合わないこともあります。

このような突然の我慢できない尿意による尿もれを「切迫性尿失禁」といいます。

過活動膀胱では、尿が膀胱に充分溜まっていない状態でも強い尿意が突然起きるため、昼夜を問わず「頻尿(尿が近い、回数が多い症状)」を伴うことが多くなります。昼間の頻尿は、基準となる時間や回数が決められているわけではないので、自分が「普段より排尿の回数が多すぎる」と感じるかどうかで判断します。また夜間頻尿は、睡眠中にトイレに起きる、それが週に何度もあり、睡眠に影響が出るような状態です。

なお、咳やくしゃみをした時や、重いものを持ったりしてお腹に力がかかったときに起こる尿もれは、「腹圧性尿失禁」といい、切迫性尿失禁とは異なります。

尿もれの原因には、腹圧性尿失禁と、過活動膀胱による切迫性尿失禁がありますが、2つが合併する場合も多く、その場合は「混合型尿失禁」となります。

尿意切迫感や頻尿が起きる要因とは?

尿意切迫感や頻尿は、身体機能の変化や異常が要因です。そのため、加齢や生活習慣が要因の一つになっていることも少なくありません。例えば、水分やカフェイン、炭酸飲料の摂りすぎや、高血圧や代謝異常の要因につながる肥満、喫煙、お酒の飲み過ぎなどに心当たりはありませんか?

また、緊張や不安などの精神的ストレスや過労、急に寒くなったときの気候変化による身体へのストレスによって起きる可能性もあり、その要因は様々です。自分の身体の状態と向き合って、セルフチェックしてみることも大切です。

過活動膀胱の原因

膀胱は、腎臓から送られてきた尿を溜め、一定量になったらそれを体の外に排出するという働きを繰り返しています。その際に蓄尿と排尿をコントロールするのが膀胱の壁をつくっている膀胱平滑筋です。膀胱平滑筋は、脳からの指令を受けた自律神経(交感神経・副交感神経)の働きで緩んだり収縮したりします。過活動膀胱になると、この膀胱平滑筋が異常に収縮し、尿意切迫感や頻尿などの症状が起こります。

原因は、神経にかかわるトラブル(神経因性)とそうでないもの(非神経因性)に大きく分けられます。神経因性は、脳や脊髄などの病気によって神経に何らかの障害が起こっている場合、非神経因性は、加齢、生活習慣の乱れによる高血圧や代謝異常、前立腺肥大症、骨盤底筋の緩み、精神的ストレスなど多様な要因が考えられ、原因が特定できないこともあります。

イメージ図

過活動膀胱の診断

過活動膀胱の診断は、自覚症状についての問診、病歴の聴き取り、過活動膀胱症状スコア(OABSS)、身体の診察・検査、尿検査、残尿の測定(超音波検査)、排尿日誌などによって行われます。

過活動膀胱症状スコア(OABSS)は、昼間頻尿、夜間頻尿、尿意切迫感、切迫性尿失禁の4つの項目で症状を確認するもので、セルフチェックにも活用できます。

排尿日誌は、1日24時間の排尿時刻と排尿量に加えて、尿失禁や尿意切迫感の有無、水分摂取量を自分で記録します。

過活動膀胱の治療方法

過活動膀胱の治療としては、まず薬物療法や行動療法を行うのが一般的です。薬物療法は、お薬を用いて、膀胱の機能を改善させるものです。行動療法は、生活習慣の見直しや膀胱の働きを調整する訓練により、膀胱の機能をコントロールできるようにする治療法です。

薬物療法や行動療法を行うのが難しいケースや、なかなか症状の改善が認められない場合は、神経変調療法、膀胱に薬物を注射する治療が用いられることもあります。

薬物療法

薬物療法は、抗コリン薬やβ3アドレナリン受容体作動薬といったお薬を用いて治療が行われます。この2つは日本において有効性や安全性について検討されており広く使用されています。

β3アドレナリン受容体作動薬は、膀胱の緊張を緩め、尿を溜める機能を高めます。抗コリン薬は、尿意切迫感につながる膀胱の異常収縮を抑制し、膀胱容量を増加させる働きがあり、現在、薬局で購入できる市販薬も発売されています。

行動療法

行動療法では、様々な指導や訓練によって排尿習慣を整えることで、膀胱の働きを調節していきます。特に中心となるのが膀胱訓練と骨盤底筋訓練です。

膀胱訓練は、尿を我慢することで尿を膀胱に溜めておく機能を改善させるもので、簡単にいうと「尿意を我慢するトレーニング」です。尿意を感じたら5分間だけ我慢し、これを10分、15分と延ばしていきます。段階的に我慢する時間を長くしていくことで、自然にトイレに行く間隔が空くようになります。

骨盤底筋訓練は、女性の尿失禁治療に対して第一に行われる治療法です。過活動膀胱の症状の一つとされる切迫性尿失禁、また女性に多い腹圧性尿失禁の改善に効果が認められています。骨盤底を支える筋肉の力を高め、尿道を収縮させやすくして膀胱の機能をコントロールします。尿道や腟、肛門をお腹の中に引き込むような意識でグッと力を入れ、一定時間(数秒〜十数秒程度)経ったら力を緩めます。このとき腹筋や腰の筋肉には力が入らないよう注意します。これを繰り返して行うことで、膀胱や子宮を支える骨盤底筋を鍛えます。

また、有酸素運動を中心に内臓脂肪を減らすような運動を行うことも、過活動膀胱の症状改善には有効とされています。

神経変調療法など

神経変調療法には、仙骨神経刺激療法、電気刺激療法、磁気刺激療法があります。いずれも膀胱や尿道の働きにかかわる神経に刺激することで、膀胱や尿道の機能を調整します。

仙骨神経刺激療法は、難治性の過活動膀胱に対して膀胱の機能改善を図ります。脊椎の下部にある仙骨の孔(あな)から電極を挿入し、仙髄神経を電気で刺激します。

電気刺激療法は、主に仙髄や骨盤、下腹部にかかわる神経を電気により刺激し、排尿筋の収縮を抑えます。

磁気刺激療法は、コイルに電流を流すことによって発生させた磁場を体表面に当て、体内の筋や神経を刺激して膀胱の機能を改善させます。

近年は、膀胱に薬物を注射する治療も健康保険適応となっています。

まとめ

過活動膀胱は、排尿というデリケートな問題であるため相談しづらいものですが、日常のQOLに大きく影響します。

ここまでご紹介したように、過活動膀胱の症状改善に対応する選択肢は増えています。まずは、ご自身のライフスタイルと自覚症状をセルフチェックする参考にしてみてください。

【医学監修】関口由紀

【医学監修】関口由紀

女性医療クリニックLUNAグループ理事長。横浜市立大学泌尿器病態学客員教授。2005年横浜元町女性医療クリニック・LUNA開業。18年、ステージ別に「LUNA横浜元町」(2階)と「LUNAネクストステージ」(3階)に再構成。女性の生涯にわたるヘルスケアを実践。(www.luna-clinic.jp
女性の一生涯にわたるライブスタイルを提案するインターネットサイト「フェムゾーンラボ」(www.femzonelab.com)の社長でもある。