女性の尿もれ、なぜ起こる?タイプ別の原因と対策を解説します!

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女性の尿もれ、なぜ起こる?タイプ別の原因と対策を解説します!

「突然、尿意に襲われてトイレに間に合わなかった」「くしゃみをしたとたん、尿もれしてしまった」といった経験、ありませんか?

尿もれは、多くの女性が経験している症状で、軽いものも含めると40歳以上の約4割は経験があると推測されています。当人にはショックですし、他人にも相談しづらいため1人で悩んでいる方も多いようです。1)

  • 1)安井 智代,角 俊之,石河 修:女性と尿失禁.産婦人科治療,2005; 90: 396-402

尿もれは、早い段階で原因を見極めて適切に対処すれば、改善することも可能です。まずは、あなたの尿もれのタイプを知って、対策を考えてみましょう!

原因から考える あなたの尿もれはどのタイプ?

女性は、もともと男性に比べて尿道が短い身体構造になっています。また、男性とは異なる女性ホルモン/男性ホルモンバランスの変化の影響や、出産など、比較的若い年代でもいろいろな原因があり尿もれのリスクが多くなります。原因は1つだけでなく、複数の要因で起きていることもあります。
成人女性の尿もれの種類として多いのは、以下3つのタイプです。

1つ目は、「切迫性尿失禁」。
急に強い尿意を感じ、自分では排尿したいわけではないにも関わらず、突然尿が漏れてしまうタイプです。過活動膀胱という疾患の1症状で、冷たい水に触れたときや、ふと立ち上がったときなど、突然起こることもあり、トイレでもない場所で漏らしてしまったなど、本人にとってはショックも大きい症状です。

2つ目は、「腹圧性尿失禁」。
女性の尿もれでは最も多いタイプで、咳やくしゃみをした時や、重い荷物を持ち上げた時など、お腹に力を入れるタイミングで尿が漏れてしまうタイプです。妊娠中や出産後、また加齢などに伴い、骨盤底筋が緩んでしまっている女性によく起こります。

3つ目は、「混合型尿失禁」。
「切迫性尿失禁」と「腹圧性尿失禁」の両方のタイプが混在して起こります。尿もれ症状のある中高年以上の女性は、この混合型のタイプが多くみられます。

切迫性尿失禁

切迫性尿失禁の特徴は、急に起こる強い尿意である「尿意切迫感」が原因で起こる尿もれです。
この厄介な尿意切迫感は、なぜ起こるのでしょうか。
通常は、膀胱に少し尿が溜まると、脳は軽く尿意を感じます。しかしその時すぐにトイレに行かなくても、通常は充分に尿が溜まるまで、排尿を自分の意志でコントロールすることができます。しかし、何らかの原因によって、脳の指令がうまくいかなくなると、尿があまり膀胱に溜まっていない状態でも、がまんできないぐらいの強い尿意を突然感じることがあり、その結果、尿道が開いてしまったり、膀胱が強く収縮してしまい、トイレに間に合わず尿が漏れてしまうことがあるのです。

このように、尿意切迫感によって、突然、尿もれしてしまうことを切迫性尿失禁といい、膀胱の異常収縮によって尿意切迫感や切迫性尿失禁が起こる疾患を「過活動膀胱」と言います。

→過活動膀胱についてはこちらの記事もご覧ください。
(過活動膀胱とは?まずは症状や原因、治療法を知っておきましょう | 大鵬薬品工業株式会社)

腹圧性尿失禁

重いものを持ち上げたり、くしゃみなどでお腹に力が入った時に無意識に尿が漏れるのが腹圧性尿失禁で、女性の経験する尿もれのタイプとしては最も多い症状です。
腹圧性尿失禁が起こる原因は、骨盤底筋という筋肉が緩んだり、骨盤底の靭帯や筋膜が出産で損傷したりすることです。人間には、骨盤の下部に骨盤底という排泄をコントロールし、内臓を支持するプレート状の構造があります。その構成成分としてハンモック状の骨盤底筋肉群があり、この骨盤底筋群は、骨盤内の臓器や膀胱、子宮を支えるとともに、排尿や排便機能にも関わっています。骨盤底は、女性は出産によって100%傷みます。さらに骨盤底筋も筋肉なので、加齢によって機能が衰えていきますし、普段の姿勢や腹圧、妊娠・出産や肥満などによっても筋肉が萎縮してしまうリスクがあります。さらに閉経後は骨盤底を構成する皮下組織や靭帯筋膜等も女性ホルモン(一部男性ホルモン)の低下によってぜい弱化し、これも尿失禁が増加する一因になります。

混合型尿失禁

混合型尿失禁とは、文字通り、切迫性尿失禁と腹圧性尿失禁の両方のタイプの尿もれが起こることをいいます。尿もれが起こるタイミングは両方のタイプが同時の場合もあれば、それぞれ別々に起こる場合もあります。切迫性尿失禁と腹圧性尿失禁の単独症状の場合より、混合型尿失禁の患者の症状は、より重症で、生活の質を落とします。
日々の尿トラブルを記録しておくと、腹圧性尿失禁の症状が強いのか、切迫性尿失禁の症状が強いのかがわかってきます。女性の尿もれは、女性ホルモンの影響や、妊娠・出産のイベントなど様々な背景があります。
もし、日常的に尿もれが起きて悩んでいる場合は、ご自身の排尿記録をつけてみて、その記録を元に専門医に相談してみましょう。

原因別尿もれのケアや治療法

女性の尿もれのタイプとその主な原因をみてきましたが、それぞれの原因によって対策が異なります。
まずは、症状の頻度や重症度から原因をはっきりさせたうえで、治療法を選択していくことになりますが、主な治療法には、「行動療法」、「薬物療法」、「手術療法」などがあります。

切迫性尿失禁の場合

切迫性尿失禁の場合は、原因を見極めて対処することが重要です。カフェインや水分の取り過ぎや、過度のストレス、肥満や便秘などがあれば、ご自身で日常生活の対策が必要です。また、尿意が起きた時すぐトイレに行くのではなく、可能な場合は少しの時間ガマンしてみる膀胱訓練や、骨盤底筋体操なども効果的とされています。
そうした対処では改善しない場合、膀胱の異常収縮を抑えるお薬を服用する薬物療法が有効です。女性の過活動膀胱症状のセルフメディケーションの一つとしてOTC医薬品もあり、薬局やドラッグストアで購入できます。医療機関を受診する時間がない方は、一度薬剤師へ相談してみましょう。医療機関では、健康保険適応で膀胱内注射などの治療も行われています。

腹圧性尿失禁の場合

腹圧性尿失禁の場合には、尿道の周囲にある骨盤底筋を鍛える骨盤底筋体操が有効です。
骨盤底筋体操は、肛門と腟をきゅーっと身体の中に絞り込むように収縮して、そのまま力を入れた状態で5~10秒数えます。数え終わったら完全に力を抜いて、5~10秒休みます。このくり返しを1日に何回か意識して鍛えることで、軽度の尿もれは改善できます。

→骨盤底筋体操についてはこちらの記事もご覧ください。
(骨盤底筋運動~頻尿・尿もれの改善に | ハルンケア | 大鵬薬品工業株式会社)

それでも改善しない場合は、薬物療法や、レーザー、手術療法を検討します。
手術療法でよく行われているのは、ポリプロピレンメッシュのテープを尿道の下に通して尿道を支える「TVT手術」や「TOT手術」などで、比較的短い手術時間で、長期成績も報告されている治療法です。

もし、薬物療法や行動療法でも症状が改善しない場合、別の原因が裏に隠れているため尿もれが起こっているのかもしれません。たとえば、膀胱瘤や子宮脱、脳血管の異常などがあると、その弊害で尿もれが起こる場合もあります。ご自身で対策をしてみても効果が感じられない、日常生活に支障がある場合は、早めに病院を受診するようにしてください。

尿もれは病気に該当する?何科にかかればよい?

「尿もれは命に関わるものじゃないから…」「恥ずかしいから相談したくない…」などとガマンしてしまう方が多いのですが、症状があると日常生活の質を大きく下げてしまい、趣味や旅行なども楽しめなくなってしまいます。

尿もれで受診する時は、「泌尿器科」に行きましょう。泌尿器科というと男性患者が多い印象があるかもしれませんが、専門医に診てもらうのが一番ですし、最近では女性の医師も増えており、早い段階で相談する患者さんも多くいるので勇気を出して受診してみてください。
他にも「女性泌尿器科」の診療をしている婦人科やレディースクリニックでも診てもらうことができます。

受診の際には、困っていることや普段の排尿記録を伝えるといいでしょう。どのような時に尿もれがおきるか、どれくらいの頻度か、その他排尿に関して困っていることにどのような症状があるかなどをまとめておくと、スムーズに診察を受けられます。

よくある質問

尿もれは多くの女性が経験している症状。悩んでいるのはあなただけではありません。
尿もれのよくある質問について解説していきます。

20代でも尿もれしてしまうのはどうして?

最近の調査によると2)、20代でも尿もれの症状がある方がおり、日本国内で「症状がある」と回答した割合が、切迫性尿失禁と腹圧性尿失禁ともに1割ほどあるという報告がありました。
切迫性尿失禁は、特定の環境下でのストレスや生活習慣の乱れによって起こることがあります。ただし、まれに間質性膀胱炎などの病気が潜んでいる場合もあります。
腹圧性尿失禁は、骨盤底筋の力が弱くなることで起こりますが、妊娠・出産をしていなくても、骨盤底筋がうまく機能していないため尿もれが起こることがあります。骨盤底筋は、前と後ろからかかる力のバランスにより機能しており、このバランスが悪かったり、また、尿道の周囲の筋肉・靭帯が損傷したりすると尿もれが起こります。また、若い女性では、ハードな運動により、おしりの筋肉や股関節の筋肉が発達している一方、尿道周囲の筋肉や骨盤底筋が発達していない場合、バランスが悪いと腹圧がかかったときにうまく尿を抑えることができずに尿もれしてしまう場合があります。骨盤底筋が元々弱い場合や、肥満傾向のある場合も尿もれが起こりやすくなります。若いうちからの骨盤底筋トレーニングの習慣とフェムゾーンの保湿ケアは、その後の尿のトラブルを予防するためにも重要です。
尿もれの症状が続いて生活に支障をきたしている場合は早めに医療機関を受診してください。

  • 2)Mitsui T, et al : Prevalence and impact on daily life of lower urinary tract symptoms in Japan : Results of the 2023 japan community health survey (JaCS 2023). Int J Urol 2024 ; Advance online publication.
    doi: 10.1111/iju.15454. Epub 2024 Mar 21.

尿が少しずつもれるのは病気?

尿が少しずつ漏れ出る尿もれは、「溢流性(いつりゅうせい)尿失禁」といいます。女性では比較的稀な病態です。
尿が出にくい排尿障害が前提にあるので、トイレで尿を出し切れず、常に膀胱に尿が溜まっているために起こります。女性では、以前行われた子宮がんの拡大手術か放射線治療の影響による術後障害で排尿がうまくいかない場合に起こることもあります。子宮脱など他の病気が原因の場合もあるので、専門医で相談しましょう。

【医学監修】関口由紀

【医学監修】関口由紀

女性医療クリニックLUNAグループ理事長。横浜市立大学泌尿器病態学客員教授。2005年横浜元町女性医療クリニック・LUNA開業。18年、ステージ別に「LUNA横浜元町」(2階)と「LUNAネクストステージ」(3階)に再構成。女性の生涯にわたるヘルスケアを実践。(www.luna-clinic.jp
女性の一生涯にわたるライブスタイルを提案するインターネットサイト「フェムゾーンラボ」(www.femzonelab.com)の社長でもある。