乳癌

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海外第Ⅲ相比較試験
:CA012ー0試験1,2)[非劣性試験]

  • 1) A Controlled Randomized, Phase Ⅲ, Multicenter, Open Label Study of ABI-007(A Cremophor®-Free, Protein Stabilized, Nanoparticle Paclitaxel)and Taxol® in Patients With Metastatic Breast Cancer,社内資料; 承認時評価資料
  • 2) Gradishar, W.J. et al.: J. Clin. Oncol., 2005, 23(31), 7794-7803; 承認時評価資料

本試験の設計者である大鵬薬品工業株式会社は、本試験の実施及び結果解釈に寄与するデータ収集・解析に資金を提供しました。

試験概要

転移性乳癌患者を対象として、アブラキサン群又は他のパクリタキセル製剤群に無作為に割り付け、抗腫瘍効果、安全性を比較しました。

試験デザイン 多施設共同無作為化非盲検比較試験

試験デザイン 多施設共同無作為化非盲検比較試験

  • ※他のパクリタキセル製剤の国内で承認されている乳癌の用法・用量は「A法:通常、成人にはパクリタキセルとして、1日1回210mg/m2(体表面積)を3時間かけて点滴静注し、少なくとも3週間休薬する。これを1クールとして、投与を繰り返す。B法:通常、成人にはパクリタキセルとして、1日1回100mg/m2(体表面積)を1時間かけて点滴静注し、週1回投与を6週連続し、少なくとも2週間休薬する。これを1クールとして、投与を繰り返す。」である。

評価項目

  • 主要評価項目:有効性(標的病変における奏効[CR+PR]率)、安全性
  • 副次評価項目:治験責任医師評価における奏効率、無増悪期間(TTP)、全生存期間(OS)等

評価基準

  • 奏効率:RECISTに従う
  • 安全性:NCIーCTC v2.0に従う

解析方法

標的病変奏効率は3ステップの検証を計画しました。第1ステップは、試験治療ライン(1次治療vs. 2次治療以降)を層としたCochran-Mantel-Haenszel検定を用いて非劣性を有意水準を片側0.023475にて検証しました。非劣性マージンは、他のパクリタキセル製剤群に対するアブラキサン群の奏効率の比として0.75としました。第1ステップが有意であった場合に第2ステップへ進み、試験治療ラインを層としたCochran-Mantel-Haenszel検定を用いて優越性を有意水準を片側0.025にて検証することとしました。第2ステップが有意であった場合に第3ステップへ進み、試験治療ラインが1次治療の患者を対象に、χ2検定を用いて優越性を有意水準を片側0.025にて検証することとしました。TTP及びOS曲線はKaplan-Meier法を用いて推定し、二群間の差はlog-rank検定を用いて検定しました。

症例の内訳

症例数(%)

アブラキサン群 他のパクリタキセル製剤群
登録例数 233 227
適格例数 229 225
 1次治療例数 97 (42) 89 (40)
 2次治療以降例数 132 (58) 136 (60)
  • *ITT集団

治療の実施状況

症例数(%)

アブラキサン群 他のパクリタキセル製剤群
6コース以上 129/233(55) 112/227(49)
6コース未満 104/233(45) 115/227(51)
累積投与量 中央値[範囲](mg/m2 1560.0[260ー4680] 875.0[175ー3150]

患者特性(ITT集団)

症例数(%)

背景因子 アブラキサン群
(n=229)
他のパクリタキセル製剤群
(n=225)
年齢(歳) 平均値[範囲] 53.1 [26ー79] 53.3 [30ー83]
ECOG Performance Status 0 81(35) 82(36)
1 134(59) 138(61)
2ー3 14(6) 5(2)
主要な転移臓器 肝臓 92(41) 97(43)
74(33) 79(35)
リンパ節及び軟部組織 37(16) 30(13)
13(6) 13(6)
腹部 10(4) 6(3)
閉経状態 閉経前 40(17) 38(17)
閉経後 189(83) 187(83)
ホルモンレセプター エストロゲン 陽 性(+) 53(23) 42(19)
陰 性(-) 49(21) 59(26)
不 明 127(55) 124(55)
プロゲステロン 陽 性(+) 39(17) 23(10)
陰 性(-) 36(16) 51(23)
不 明 154(67) 151(67)
化学療法治療歴 28(12) 34(15)
201(88) 191(85)
 アントラサイクリン系薬剤
 (術後補助化学療法又は転移性)
53(23) 50(22)
176(77) 175(78)
転移性のみ 115(50) 130(58)
 タキサン系薬剤 226(99) 222(99)
3(1) 3(1)
 ホルモン療法 96(42) 103(46)
133(58) 122(54)

標的病変における奏効率:主要評価項目

①非劣性検定及び優越性検定
標的病変に対する奏効率は、アブラキサン群で24.0%[95%信頼区間:18.48ー29.55]、他のパクリタキセル製剤群で11.1%[95%信頼区間:7.00ー15.22]でした。
アブラキサン群の他のパクリタキセル製剤群に対する非劣性が検証され(p<0.001、CMH検定)、続いて優越性も確認されました(p<0.001、CMH検定)。

抗腫瘍効果(奏効率及び奏効率比

症例数 奏効率%
(奏効例数)
[95%信頼区間]
非劣性検定
奏効率比*†
p値、CMH検定
優越性検定
奏効率比*†
p値、CMH検定
アブラキサン群 229 24.0
(55)
[18.48-29.55]
2.110
[95.305%信頼区間:1.368ー3.254]
p<0.001
2.110
[95%信頼区間:1.376ー3.236]
p<0.001
他のパクリタキセル製剤群 225 11.1
(25)
[7.00-15.22]
  • RECISTによる評価
  • * アブラキサン群奏効率/他のパクリタキセル製剤群奏効率。奏効率比及び95.305%信頼区間の調整因子:1次治療例 vs. 2次治療以降例
  • † 1次治療例と2次治療以降例に層別化

奏効率

奏効率

最良総合効果

症例数(%)

症例数 CR PR SD PD
アブラキサン群 229 7(3) 48(21) 98(43) 61(27)
他のパクリタキセル製剤群 225 1(<1) 24(11) 114(51) 76(34)
  • RECISTによる評価

②1次治療例を対象とした標的病変に対する優越性検定(サブグループ解析)
1次治療例を対象とした標的病変に対する奏効率は、アブラキサン群で34.0%[95%信頼区間:24.59ー43.45]、他のパクリタキセル製剤群で18.0%[95%信頼区間:10.00ー25.96]でした。
アブラキサン群の他のパクリタキセル製剤群に対する優越性が確認されました(p=0.013、χ2検定)。

抗腫瘍効果(奏効率及び奏効率比

症例数 奏効率%(奏効例数) 優越性検定奏効率比
p値、χ2検定
アブラキサン群 97 34.0(33) 1.892
[95%信頼区間:1.121ー3.193]
p=0.013
他のパクリタキセル製剤群 89 18.0(16)
  • RECISTによる評価
  • *アブラキサン群奏効率/他のパクリタキセル製剤群奏効率

治験責任医師評価における奏効率:副次評価項目

治験責任医師評価による奏効率は、全例においてアブラキサン群33.2%[95%信頼区間:27.09ー39.29]、他のパクリタキセル製剤群18.7%[95%信頼区間:13.58ー23.76]でした。

奏効率

奏効率

無増悪期間:副次評価項目

アブラキサン群の無増悪期間(TTP)中央値は23.0週、他のパクリタキセル製剤群は16.6週であり、アブラキサン群で有意な延長が認められました(p=0.002、log-rank検定)。

無増悪期間(Kaplan-Meier曲線)

無増悪期間(Kaplan-Meier曲線)

アブラキサン群
(n=229)
他のパクリタキセル製剤群
(n=224)
TTP中央値(週) 23.0
[95%信頼区間:19.4ー26.1]
16.6
[95%信頼区間:15.1ー20.1]
p値、log-rank検定 0.002
HR 0.726
[95%信頼区間:0.589ー0.895]

全生存期間:副次評価項目

①全例
アブラキサン群の全生存期間(OS)中央値は65.0週、他のパクリタキセル製剤群は55.3週でした(p=0.322、log-rank検定)。

全生存期間(Kaplan-Meier曲線)

全生存期間(Kaplan-Meier曲線)

アブラキサン群
(n=229)
他のパクリタキセル製剤群
(n=225)
OS中央値(週) 65.0
[95%信頼区間:53.4ー76.9]
55.3
[95%信頼区間:48.0ー66.4]
p値、log-rank検定 0.322
HR 0.899
[95%信頼区間:0.728ー1.110]

②1次治療例(サブグループ解析)
1次治療例を対象としたアブラキサン群の生存期間中央値は71.0週、他のパクリタキセル製剤群は77.9週でした(p=0.299、log-rank検定)。

1次治療例を対象とした生存期間(Kaplan-Meier曲線)

1次治療例を対象とした生存期間(Kaplan-Meier曲線)

アブラキサン群
(n=97)
他のパクリタキセル製剤群
(n=89)
OS中央値(週) 71.0
[95%信頼区間:59.4ー87.7]
77.9
[95%信頼区間:58.1ー98.0]
p値、log-rank検定 0.299
HR 1.199
[95%信頼区間:0.851ー1.689]

③2次治療以降例(サブグループ解析)
2次治療以降例を対象としたアブラキサン群の生存期間中央値は56.4週、他のパクリタキセル製剤群は46.7週であり、アブラキサン群で有意な延長が認められました(p=0.024、log-rank検定)。

2次治療以降例を対象とした生存期間(Kaplan-Meier曲線)

2次治療以降例を対象とした生存期間(Kaplan-Meier曲線)

アブラキサン群
(n=132)
他のパクリタキセル製剤群
(n=136)
OS中央値(週) 56.4
[95%信頼区間:44.7ー76.1]
46.7
[95%信頼区間:39.0ー55.3]
p値、log-rank検定 0.024
HR 0.734
[95%信頼区間:0.560ー0.962]

安全性(副作用、有害事象)

転移性乳癌を対象とした海外第Ⅲ相比較試験(CA012-0試験)における副作用の発現率は、アブラキサン群98.7%(226/229例)、他のパクリタキセル製剤群99.6%(224/225例)でした。
いずれかの群で発現率が10%以上であった副作用は以下の通りでした。

海外第Ⅲ相比較試験(CA012-0試験)における副作用発現状況一覧(いずれかの群で発現率10%以上)

症例数(%)

副作用 アブラキサン群 他のパクリタキセル製剤群
全体 Grade 3*1以上 全体 Grade 3*1以上
安全性評価対象例数 229 225
副作用発現 226(98.7) 119(52.0) 224(99.6) 129(57.3)
血液/骨髄*2
 好中球 181(80.1) 77(34.1) 183(82.4) 118(53.2)
 白血球 162(71.7) 15(6.6) 176(79.3) 25(11.3)
 ヘモグロビン 105(46.5) 3(1.3) 96(43.2) 1(0.5)
 血小板 27(11.9) 1(0.4) 33(14.9) 2( 0.9)
 リンパ球減少 103(45.6) 10(4.4) 119(53.6) 12(5.4)
全身症状
 疲労 89(38.9) 14(6.1) 73(32.4) 4(1.8)
 発熱 26(11.4) 2(0.9) 17(7.6) 1(0.4)
皮膚科/皮膚
 脱毛 207(90.4) 211(93.8)
 顔面の発作性潮紅(Flushing) 6(2.6) 30(13.3)
消化管系
 悪心 67(29.3) 6(2.6) 46(20.4) 1(0.4)
 下痢 57(24.9) 1(0.4) 29(12.9) 2(0.9)
 嘔吐 37(16.2) 5(2.2) 19(8.4) 2(0.9)
 口内炎/咽頭炎 34(14.8) 4(1.7) 28(12.4) 1(0.4)
感染/発熱性好中球減少
 好中球数が不明な感染 35(15.3) 8(3.5) 31(13.8) 4(1.8)
 発熱性好中球減少 4(1.7) 4(1.7) 2(0.9) 1(0.4)
神経系障害
 神経障害-知覚性 163(71.2) 24(10.5) 124(55.1) 5(2.2)
疼痛
 関節痛 73(31.9) 14(6.1) 69(30.7) 7(3.1)
 筋痛 61(26.6) 16(7.0) 67(29.8) 3(1.3)
 その他の四肢痛 26(11.4) 2(0.9) 18(8.0) 1(0.4)

社内集計

  • *1:NCI-CTC v2.0に基づく評価
  • *2:アブラキサン群(n=226)、他のパクリタキセル製剤群(n=222)で集計

重篤な有害事象はアブラキサン群63例(28%)、他のパクリタキセル製剤群78例(35%)で発現し、好中球減少がアブラキサン群で24例(10%)、他のパクリタキセル製剤群48例(21%)でした。
有害事象による中止はアブラキサン群23例(10%)、他のパクリタキセル製剤群20例(9%)、神経障害がアブラキサン群7例(3%)、他のパクリタキセル製剤群2例(<1%)でした。
副作用による死亡は他のパクリタキセル製剤群で多臓器不全1例(<1%)でした。

大鵬薬品