病気について

卵巣明細胞(めいさいぼう)がんとは?

卵巣は子宮の左右に一つずつある臓器です。卵巣には女性ホルモン(エストロゲン、プロゲステロン)を分泌したり、初経から閉経までの期間、排卵したりする役割があります。卵巣から排卵された卵子は、子宮の左右から伸びている卵管を通じて子宮まで運ばれます。

卵巣、卵管、そして腹膜(腹部の臓器や腹壁の内側などを覆う膜)で発生するがんは、性質や病理組織検査でみられる特徴が似ています。そのため、これらのがんは一つにまとめて扱われ、治療が行われます。

卵巣の位置

卵巣の位置

卵巣がんは発生する部位によって下記のように分類されます。

上皮性腫瘍じょうひせいしゅよう 卵巣の表面を覆う表層上皮に発生する腫瘍
胚細胞腫瘍はいさいぼうしゅよう 卵子のもととなる袋状の組織である卵胞らんぽうの中の胚細胞に発生する腫瘍
性索間質性腫瘍せいさくかんしつせいしゅよう 卵胞周囲にあるホルモンをつくり出す性索間質に発生する腫瘍

卵巣がんは組織型(そしきけい)(組織のタイプ)によっても分類されます。卵巣がんの約90%を占める上皮性腫瘍は、主に4種類の組織型に分けられます。組織型は抗がん剤の治療効果などに影響します。

組織型の一つである明細胞がんは日本人の患者さんでは約24%と1)、欧米人における10%未満と比べて高い割合で認められます2)。年齢層は30代が約5%、40代が約25%、50代が約31%、60代が約26%、70代が約11%と報告されています1)

卵巣がんの組織型分類の発生率と特徴

卵巣がんの組織型分類の発生率と特徴
榎本隆之. 日本産科婦人科学会婦人科腫瘍委員会報告. 2017年度患者年報. 日産婦誌., 2019. 71, 669-724.
国立がん研究センター中央病院 腫瘍内科、婦人腫瘍科、他 編:最先端治療 子宮がん・卵巣がん:法研,2021, p119.
日本婦人科腫瘍学会 編:卵巣がん・卵管癌・腹膜癌治療ガイドライン2025年版:金原出版,2025, p64-70,122-124.
1)榎本隆之. 日本産科婦人科学会婦人科腫瘍委員会報告. 2017年度患者年報. 日産婦誌., 2019. 71, 669-724.
2)日本婦人科腫瘍学会 編:卵巣がん・卵管癌・腹膜癌治療ガイドライン2025年版:金原出版,2025, p122-124.

がんと遺伝子の関係とは?

がん細胞ではさまざまな遺伝子に変化(遺伝子変異)が起こります。遺伝子変異(変異体ともいう)が生じると、がん細胞の増殖や生存につながります。がん細胞の増殖や生存は、がん細胞内のタンパク質などによる信号伝達によって引き起こされます。正常の細胞の場合は、増殖の信号は必要なときのみに伝わるよう調節されていますが、がん細胞では伝達異常が起こっています。

  • 正常の細胞

    正常の細胞
  • がん細胞

    がん細胞

卵巣がんの遺伝子検査とは?

がんの部位や患者さんによっては、医師が必要と判断した場合に遺伝子検査を行うことがあります。遺伝子検査は、一つまたはいくつかの遺伝子を調べてがんを診断するためや、特定のお薬の効きやすさ、副作用の出やすさを判断するために用いられます。

がん治療に用いられるお薬の中には、がん細胞にみられる特定の遺伝子変異を狙うものがあります。遺伝子検査の結果、遺伝子変異があるとわかった場合には、その遺伝子変異にあったお薬による治療を検討します。

卵巣明細胞がんでは、PIK3CA遺伝子を調べるために遺伝子検査を行います。

卵巣明細胞がんの遺伝子検査から治療までの流れ

卵巣明細胞がんの遺伝子検査から治療までの流れ

PIK3CA遺伝子変異とは?

PIK3CA遺伝子変異は卵巣明細胞がんの30~40%で認められることが報告されています1-4)

PIK3CA遺伝子とは、細胞内で信号を伝えるはたらきを持つ「PI3Kα」というタンパク質の設計図です。PI3Kαは、細胞に増殖の信号を伝える役割を担っていますが、PIK3CA遺伝子に変化が起こる(PIK3CA遺伝子変異)と、信号が過剰に伝わるようになり、がん細胞の増殖を引き起こすと考えられています。

遺伝子変異とは?
1)Yamamoto S, et al.: Virchows Arch., 2012. 460(1),77-87.
2)Itamochi H, et al.: Br J Cancer., 2017. 117(5),717-724.
3)Kuo KT, et al.: Am J Pathol., 2009. 174(5),1597-1601.
4)Zannoni GF, et al.: J Clin Pathol., 2016. 69(12),1088-1092.