ニュースリリース

2010年08月16日
大鵬薬品工業株式会社

FIRIS試験の研究成果がThe Lancet Oncology 電子版に掲載

大鵬薬品工業株式会社と第一三共株式会社が、試験依頼者となり国内で実施されたFIRIS試験の研究成果が、癌研究領域の主要雑誌である医学誌 The Lancet Oncology電子版に掲載されました。
FIRIS試験は、現在進行大腸癌の標準療法の一つとされているFOLFIRI療法に対してIRIS療法の有効性が同等であることを検証する目的で実施されました。その結果、IRIS療法はFOLFIRI療法と比較して、主要評価項目である無増悪生存期間における非劣性が証明され、癌治療に従事されている医療関係者および治療を受けられる患者さんに大腸癌治療の新しい選択肢を示すものとなりました。

FIRIS試験
切除不能大腸癌の二次治療例に対するCPT-11+5-FU+l-LV(FOLFIRI)療法とCPT-11+TS-1(IRIS)療法との第II/III相臨床試験

IRIS療法
CPT-11 125 mg/m2を第1日目と第15日目に投与し、TS-1を体表面積に従って40-60 mgを1日2回2週間服用し、これを4週間毎に繰り返す

FOLFIRI療法
l-LV 200 mg/m2とCPT-11 150 mg/m2に続いて5-FU 400 mg/m2急速静注を第1日目に、また5-FU 2,400 mg/m2の持続点滴静注を46時間かけて投与し、これを2週間毎に繰り返す


The Lancet Oncology
2009年のImpact factorは14.470であり、がん研究領域における主要医学雑誌の一つ。

◆FIRIS試験結果の概要 ◆

試験名
切除不能大腸癌の二次治療例に対するCPT-11+5-FU+l-LV(FOLFIRI)療法とCPT-11+TS-1(IRIS)療法との第II/III相臨床試験:FIRIS試験
背景
FOLFOX療法とFOLFIRI療法は切除不能大腸癌の一次および二次治療として広く使用されている。 しかしながら、静脈内投与による5-FUベースの治療法は持続点滴や埋込み静注ポートを必要とするため簡便でない。 そのため我々は切除不能大腸癌二次治療例を対象としたFOLFIRI療法に対するIRIS療法の非劣性を検証するランダム化比較試験を計画した。
方法
2006年1月30日~2008年1月29日の間に日本国内の40施設が参加し、二次治療を必要とする切除不能大腸癌症例が、FOLFIRI群(213例)とIRIS群(213例)にランダム化割り付けされた。 FOLFIRI群においてはl-LV 200 mg/m2とCPT-11 150 mg/m2に続いて5-FU 400 mg/m2急速静注を第1日目に、また5-FU 2,400 mg/m2の持続点滴静注を46時間かけて投与し、これを2週間毎に繰り返した。 IRIS群ではCPT-11 125 mg/m2を第1日目と第15日目に投与し、TS-1を体表面積に従って40-60 mgを1日2回2週間服用し、これを4週間毎に繰り返した。 主要評価項目は、非劣性の許容限界を1.333とする無増悪生存期間であった。 統計解析は、割付例全例を対象とした解析によった。 本試験はClinicalTrials.govに臨床試験登録された試験である(NCT00284258)。
結果
ランダム化割り付けされた全症例が主要評価項目の解析に含められた。 追跡期間中央値は12.9ヵ月で、無増悪生存期間の中央値はFOLFIRI群で5.1ヵ月、IRIS群で5.8ヵ月であった(ハザード比1.077; 95%信頼区間: 0.879-1.319; 非劣性の検定p=0.039)。 最も一般的なグレード3/4の薬物有害反応は、好中球減少症(FOLFIRI群 52.1% 対 IRIS群36.2% , p=0.0012)、白血球減少症(FOLFIRI群 15.6% 対 IRIS群18.1% , p=0.5178)および下痢(FOLFIRI群 4.7% 対 IRIS群 20.5%, p<0.0001)であった。 FOLFIRI群では1例の治療関連死(治療終了後28日以内のショックによる低血圧を原因とする死亡)を認めたがIRIS群では認めなかった。

結論
切除不能大腸癌二次治療例を対象としたIRIS療法の無増悪生存期間はFOLFIRI療法の無増悪生存期間に劣らない。IRIS療法は切除不能大腸癌二次治療例における治療選択肢の一つになりうる。

Muro K, Boku N, Shimada Y et al., Irinotecan plus S-1 (IRIS) versus fluorouracil and folinic acid plus irinotecan (FOLFIRI) as second-line chemotherapy for metastatic colorectal cancer: a randomized phase 2/3 non-inferiority study (FIRIS Study).
Lancet Oncology. August 13, 2010; DOI:10.1016/S1470-2045(10)70181-9

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