非小細胞肺癌

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国際共同第Ⅲ相試験:CA031試験1,2)

A Randomized, Phase Ⅲ Trial of ABI-007 and Carboplatin Compared with Taxoland Carboplatin as First-line Therapy in Patients with Advanced Non-Small Cell Lung Cancer (NSCLC)(Study Number CA031)(CA031試験)

  • 1)Socinski, M.A. et al.: J. Clin. Oncol., 2012, 30(17), 2055-2062
  • 2)A Randomized, Phase Ⅲ Trial of ABI-007 and Carboplatin Compared with Taxol® and Carboplatin as First-line Therapy in Patients with Advanced Non-Small Cell Lung Cancer(NSCLC)(Study Number CA031) Subgroup analysis of Japanese patients with NSCLC from CA031 study, 社内資料; 承認時評価資料

試験概要

未治療の進行非小細胞肺癌患者を対象として、カルボプラチン併用下でのアブラキサンと他のパクリタキセル製剤の抗腫瘍効果、安全性を比較しました。

試験デザイン 多施設共同無作為化非盲検比較試験

試験デザイン 多施設共同無作為化非盲検比較試験

  • ※1 割付調整因子:病期、年齢、性別、組織型、地域

評価項目

  • 主要評価項目:盲検下での画像評価による全奏効率(ORR)
  • 副次評価項目:無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)、奏効例の効果持続期間、病勢コントロール率(DCR)、安全性等

評価基準

  • 奏効率:RECIST v1.0に従う
  • 安全性:CTCAE v3.0-JCOG/JSCOに従う

解析方法

全ての有効性の解析はITT集団を対象としました。他のパクリタキセル製剤に対するアブラキサンの奏効率における優越性をχ2検定(両側有意水準:α=0.05)にて検証しました。なお、1回の中間解析と最終解析を計画しており、多重性の調整のため中間解析の有意水準はα=0.001、最終解析の有意水準はα=0.049としました。
PFS及びOSの生存曲線はKaplan-Meier法を用いて推定し、両群間の比較は地域及び組織型を層とした層別log-rank検定で行いました。ハザード比(HR)とその95%信頼区間は地域及び組織型を層とした層別Cox比例ハザードモデルを用いて推定しました。
サブグループ解析は全て事前に計画しており、日本人集団及び組織型別での各治療群の奏効率をχ2検定で、日本人集団及び高齢者(70歳以上)での各治療群のPFSとOSを組織型を層とした層別log-rank検定で比較しました。

症例の内訳

アブラキサン群 他のパクリタキセル製剤群
全症例 日本人 全症例 日本人
登録例数 521 74 531 75
有効性評価対象例数 521 74 531 75
安全性評価対象例数 514 72 524 75
  • *ITT:Intention To Treat

治療の実施状況

アブラキサン群 他のパクリタキセル製剤群
投与コース数 中央値[範囲] 6.0[1ー31] 6.0[1ー30]
累積投与量 中央値[範囲] アブラキサン
1325.0mg/m2[100ー5875]
カルボプラチン
3140.5mg[384ー14252]
他のパクリタキセル製剤
1125.0mg/m2[200ー5550]
カルボプラチン
3315.0mg[351ー18611]

患者特性(ITT)

症例数(%)

背景因子 全症例 日本人
アブラキサン群
(n=521)
他のパクリタキセル
製剤群(n=531)
アブラキサン群
(n=74)
他のパクリタキセル
製剤群(n=75)
年齢(歳) 中央値[範囲] 60.0[28ー81] 60.0[24ー84] 65.0[37ー79] 64.0[36ー77]
性別 男性 392(75) 397(75) 51(69) 50(67)
女性 129(25) 134(25) 23(31) 25(33)
喫煙状況 喫煙歴なし 137(26) 144(27) 13(18) 22(29)
喫煙歴あり(禁煙) 168(32) 148(28) 46(62) 32(43)
現在喫煙中 214(41) 234(44) 15(20) 21(28)
ECOG PS 0 133(26) 113(21) 35(47) 36(48)
1 385(74) 416(78) 39(53) 39(52)
2 3(<1) 2(<1) 0(0) 0(0)
組織型 腺癌 254(49) 264(50) 55(74) 58(77)
扁平上皮癌 229(44) 221(42) 10(14) 7(9)
大細胞癌 9(2) 13(2) 1(1) 1(1)
その他 29(6) 33(6) 8(11) 9(12)
ステージ ⅢB 108(21) 110(21) 19(26) 22(29)
413(79) 421(79) 55(74) 53(71)

全奏効率[盲検下での画像評価]:主要評価項目

全奏効率(ORR)は、アブラキサン群33%[95%信頼区間:28.6ー36.7]、他のパクリタキセル製剤群25%[95%信頼区間:21.2ー28.5]であり、奏効率比は1.313[95.1%信頼区間:1.082ー1.593]であり、アブラキサン群で有意に高くなりました(p=0.005、χ2検定)。
日本人集団のサブグループ解析における全奏効率は、アブラキサン群35%[95%信頼区間:24.3ー46.0]、他のパクリタキセル製剤群27%[95%信頼区間:16.7ー36.7]でした。

抗腫瘍効果(全奏効率、奏効率比

両群ともカルボプラチン併用

全症例【主要評価項目】 日本人【サブグループ解析】
アブラキサン群
(n=521)
他のパクリタキセル
製剤群(n=531)
アブラキサン群
(n=74)
他のパクリタキセル
製剤群(n=75)
全奏効率 33%
[95%信頼区間:
28.6ー36.7]
25%
[95%信頼区間:
21.2ー28.5]
35%
[95%信頼区間:
24.3ー46.0]
27%
[95%信頼区間:
16.7ー36.7]
奏効率比 1.313
[95.1%信頼区間:1.082ー1.593]
1.318
[95%信頼区間:0.810ー2.143]
p値、χ2検定 0.005 0.263
  • RECIST v1.0による評価
  • *アブラキサン群奏効率/他のパクリタキセル製剤群奏効率

全奏効率

全奏効率

無増悪生存期間:副次評価項目

無増悪生存期間(PFS)中央値は、アブラキサン群6.3ヵ月[95%信頼区間:5.6ー7.0]、他のパクリタキセル製剤群は5.8ヵ月[95%信頼区間:5.6ー6.7]でした[ハザード比0.902、95.1%信頼区間:0.767ー1.060]。
また、日本人集団のサブグループ解析における無増悪生存期間中央値は、アブラキサン群6.9ヵ月[95%信頼区間:5.4ー8.3]、他のパクリタキセル製剤群は5.6ヵ月[95%信頼区間:5.4ー6.9]でした。

無増悪生存期間(Kaplan-Meier曲線):全症例

無増悪生存期間(Kaplan-Meier曲線):全症例

アブラキサン群
(n=521)
他のパクリタキセル製剤群
(n=531)
PFS中央値(月)[95%信頼区間] 6.3
[5.6ー7.0]
5.8
[5.6ー6.7]
p値、層別log-rank検定※1 0.214
HR[95.1%信頼区間]※2 0.902
[0.767ー1.060]
  • ※1 層別因子:地域及び組織型
  • ※2 地域及び組織型を層とした層別Cox比例ハザードモデル

無増悪生存期間(Kaplan-Meier曲線):日本人(サブグループ解析)

無増悪生存期間(Kaplan-Meier曲線):日本人(サブグループ解析)

アブラキサン群
(n=74)
他のパクリタキセル製剤群
(n=75)
PFS中央値(月)[95%信頼区間] 6.9
[5.4ー8.3]
5.6
[5.4ー6.9]
p値、層別log-rank検定※1 0.467
HR[95%信頼区間]※2 0.845
[0.539ー1.325]
  • ※1 層別因子:組織型
  • ※2 組織型を層とした層別Cox比例ハザードモデル

全生存期間:副次評価項目

全生存期間(OS)中央値は、アブラキサン群12.1ヵ月[95%信頼区間:10.8ー12.9]、他のパクリタキセル製剤群は11.2ヵ月[95%信頼区間:10.3ー12.6]でした[ハザード比0.922、95%信頼区間:0.797ー1.066]。
また、日本人集団のサブグループ解析における全生存期間中央値は、アブラキサン群16.7ヵ月[95%信頼区間:12.2ー22.3]、他のパクリタキセル製剤群は17.2ヵ月[95%信頼区間:11.2ーN.C.]でした。

* N.C.:Not confirmed

全生存期間(Kaplan-Meier曲線):全症例

全生存期間(Kaplan-Meier曲線):全症例

アブラキサン群
(n=521)
他のパクリタキセル製剤群
(n=531)
OS中央値(月)[95%信頼区間] 12.1
[10.8ー12.9]
11.2
[10.3ー12.6]
p値、層別log-rank検定※1 0.271
HR[95%信頼区間]※2 0.922
[0.797ー1.066]
  • ※1 層別因子:地域及び組織型
  • ※2 地域及び組織型を層とした層別Cox比例ハザードモデル

全生存期間(Kaplan-Meier曲線):日本人(サブグループ解析)

全生存期間(Kaplan-Meier曲線):日本人(サブグループ解析)

アブラキサン群
(n=74)
他のパクリタキセル製剤群
(n=75)
OS中央値(月)[95%信頼区間] 16.7
[12.2ー22.3]
17.2
[11.2ーN.C.
p値、層別log-rank検定※1 0.814
HR[95%信頼区間]※2 0.950
[0.618ー1.460]

*N.C.:Not confi rmed

  • ※1 層別因子:組織型
  • ※2 組織型を層とした層別Cox比例ハザードモデル

安全性(副作用、有害事象)

非小細胞肺癌を対象とした国際共同第Ⅲ相試験(CA031試験)における副作用の発現率は、日本人72例を含むアブラキサン群514例のうち91.2%(469例)、日本人75例を含む他のパクリタキセル製剤群524例のうち91.8%(481例)でした。
いずれかの群で発現率が10%以上であった副作用は以下の通りでした。

国際共同第Ⅲ相試験(CA031試験)における副作用発現状況一覧(いずれかの群で発現率10%以上)

両群ともカルボプラチン併用 症例数(%)

副作用*1 全症例 日本人
アブラキサン群 他のパクリタキセル製剤群 アブラキサン群 他のパクリタキセル製剤群
全体 Grade 3*2以上 全体 Grade 3*2以上 全体 Grade 3*2以上 全体 Grade 3*2以上
安全性評価対象例数 514 524 72 75
副作用発現 469(91.2) 321(62.5) 481(91.8) 315(60.1) 72(100.0) 67(93.1) 74(98.7) 62(82.7)
血液及びリンパ系障害
好中球減少症*3 304(59.1) 217(42.2) 293(55.9) 251(47.9) 65(90.3) 50(69.4) 64(85.3) 56(74.7)
血小板減少症*4 230(44.7) 94(18.3) 141(26.9) 35(6.7) 58(80.6) 10(13.9) 41(54.7) 2(2.7)
貧血*5 251(48.8) 125(24.3) 133(25.4) 33(6.3) 62(86.1) 23(31.9) 46(61.3) 7(9.3)
白血球減少症*6 149(29.0) 72(14.0) 143(27.3) 69(13.2) 67(93.1) 35(48.6) 59(78.7) 28(37.3)
リンパ球減少症*7 28(5.4) 7(1.4) 24(4.6) 5(1.0) 25(34.7) 7(9.7) 24(32.0) 5(6.7)
皮膚及び皮下組織障害
脱毛症 287(55.8) 2(0.4) 312(59.5) 67(93.1) 62(82.7)
発疹 36(7.0) 37(7.1) 24(33.3) 24(32.0)
神経系障害
末梢性感覚ニューロパチー*8 234(45.5) 16(3.1) 315(60.1) 61(11.6) 46(63.9) 2(2.8) 61(81.3) 10(13.3)
味覚異常 35(6.8) 32(6.1) 20(27.8) 11(14.7)
頭痛 14(2.7) 7(1.3) 1(0.2) 8(11.1) 3(4.0)
末梢性運動ニューロパチー 8(1.6) 1(0.2) 17(3.2) 1(0.2) 7(9.7) 13(17.3) 1(1.3)
全身障害及び投与局所様態
疲労 113(22.0) 15(2.9) 110(21.0) 18(3.4) 53(73.6) 2(2.8) 50(66.7) 6(8.0)
無力症 65(12.6) 8(1.6) 56(10.7) 13(2.5) 1(1.3)
発熱 21(4.1) 15(2.9) 11(15.3) 8(10.7)
胃腸障害
悪心 132(25.7) 5(1.0) 126(24.0) 1(0.2) 49(68.1) 1(1.4) 39(52.0)
便秘 54(10.5) 1(0.2) 46(8.8) 4(0.8) 39(54.2) 1(1.4) 30(40.0) 2(2.7)
嘔吐 54(10.5) 2(0.4) 62(11.8) 1(0.2) 21(29.2) 21(28.0)
下痢 52(10.1) 2(0.4) 43(8.2) 21(29.2) 16(21.3)
口内炎 29(5.6) 19(3.6) 23(31.9) 10(13.3)
臨床検査
アラニン・アミノトランスフェラーゼ増加 40(7.8) 7(1.4) 41(7.8) 3(0.6) 24(33.3) 2(2.8) 29(38.7) 1(1.3)
アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ増加 36(7.0) 4(0.8) 29(5.5) 4(0.8) 26(36.1) 2(2.8) 23(30.7) 1(1.3)
体重減少 26(5.1) 2(0.4) 24(4.6) 1(0.2) 18(25.0) 2(2.8) 15(20.0)
ヘマトクリット減少 20(3.9) 5(1.0) 10(1.9) 1(0.2) 19(26.4) 5(6.9) 9(12.0) 1(1.3)
赤血球数減少 20(3.9) 5(1.0) 14(2.7) 1(0.2) 18(25.0) 5(6.9) 12(16.0) 1(1.3)
血中ビリルビン増加 14(2.7) 14(2.7) 1(0.2) 7(9.7) 9(12.0)
血中アルカリホスファターゼ増加 12(2.3) 9(1.7) 1(0.2) 11(15.3) 6(8.0)
血中アルブミン減少 10(1.9) 13(2.5) 10(13.9) 13(17.3)
C-反応性蛋白増加 9(1.8) 1(0.2) 5(1.0) 9(12.5) 1(1.4) 5(6.7)
血中ナトリウム減少 5(1.0) 13(2.5) 2(0.4) 5(6.9) 13(17.3) 2(2.7)
代謝及び栄養障害
食欲減退 83(16.1) 9(1.8) 90(17.2) 3(0.6) 50(69.4) 8(11.1) 54(72.0) 2(2.7)
筋骨格系及び結合組織障害
関節痛 60(11.7) 124(23.7) 8(1.5) 30(41.7) 51(68.0) 5(6.7)
筋肉痛 46(8.9) 1(0.2) 95(18.1) 10(1.9) 21(29.2) 45(60.0) 5(6.7)
呼吸器、胸郭及び縦隔障害
鼻出血 29(5.6) 2(0.4) 8(11.1)
しゃっくり 13(2.5) 12(2.3) 10(13.9) 11(14.7)
精神障害
不眠症 5(1.0) 10(1.9) 1(0.2) 3(4.2) 9(12.0)

社内集計

  • *1:MedDRA/J v12.1
  • *2:CTCAE v3.0-JCOG/JSCOに基づく評価
  • *3:好中球減少症+好中球数減少
  • *4:血小板減少症+血小板数減少
  • *5:貧血+ヘモグロビン減少
  • *6:白血球減少症+白血球数減少
  • *7:リンパ球減少症+リンパ球数減少
  • *8:末梢性感覚ニューロパチー+末梢性神経障害+多発性神経障害

重篤な有害事象は、アブラキサン群93例(18%)、他のパクリタキセル製剤群80例(15%)に発現し、貧血が最も多くアブラキサン群19例(4%)、他のパクリタキセル製剤群3例(<1%)でした。
有害事象による中止はアブラキサン群80例(16%)、他のパクリタキセル製剤群84例(16%)、その内訳は好中球減少*1がアブラキサン群15例(3%)、他のパクリタキセル製剤群8例(2%)、血小板減少*2がアブラキサン群14例(3%)、他のパクリタキセル製剤群8例(2%)でした。
副作用による死亡はアブラキサン群で多臓器不全1例(<1%)、他のパクリタキセル製剤群で胃腸出血1例(<1%)でした。

  • *1 好中球減少:好中球減少症 *2 血小板減少:血小板減少症
大鵬薬品