非小細胞肺癌

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国内第Ⅲ相試験:J-AXEL試験1)

Phase 3 Trial Comparing Nanoparticle Albumin-Bound Paclitaxel With Docetaxel for Previously Treated Advanced NSCLC(J-AXEL試験)

  • 1)Yoneshima, Y. et al.: J Thorac Oncol., Published online: April 26, 2021
    Yoneshima, Y. et al.: J Thorac Oncol., Published online: April 26, 2021 Supplemental Digital Content

本試験は大鵬薬品工業株式会社の資金により実施されました。

試験概要

既治療の進行非小細胞肺癌患者を対象として、アブラキサンとドセタキセルの有効性と安全性を比較しました。

試験デザイン 多施設共同無作為化非盲検非劣性試験

多施設共同無作為化非盲検非劣性試験

  • ※ 割付調整因子:ECOG PS(0 vs. 1)、組織型(扁平上皮癌 vs. 非扁平上皮癌)、病期(ステージⅢ vs. Ⅳ vs. 再発)、性別、EGFR遺伝子変異(変異型 vs. 野生型 vs. 不明)、前殺細胞性化学療法数(1 vs. 2)、ICIの治療歴

評価項目

  • 主要評価項目:全生存期間(OS)
  • 副次評価項目:無増悪生存期間(PFS)、全奏効率(ORR) 等

評価基準

  • 奏効率:RECIST v1.1に従う
  • 安全性:NCI CTCAE v4.0に従う

解析方法

OSとPFSの評価対象はITT集団としました。本試験は1回の中間解析を計画しており、多重性の調整のためOSの中間解析の有意水準はα=0.001(片側)、最終解析の有意水準はα=0.024(片側)としました。OSのHR、95.2%信頼区間の推定には、層別Cox回帰モデル※1を用いました。非劣性マージンを1.33とし、HRの95.2%信頼区間の上限が1.33を下回った場合、非劣性が検証されたとしました。非劣性マージン1.33で非劣性が検証された場合、続いて非劣性マージンを1.25として検定し、そこでも検証された場合、優越性マージンを1.0として優越性を検定することとしました。
OS、PFSについて、事前に計画した項目〔年齢、性別、PS、組織型、喫煙歴、病期、EGFR遺伝子変異、前殺細胞性化学療法数、免疫チェックポイント阻害剤(ICI)治療歴〕でサブグループ解析を実施し、Cox回帰モデルを用いてHRと95%信頼区間を算出しました。
全奏効率及び組織型別での全奏効率(事前に計画したサブグループ解析)について、各治療群の比較をFisher’s exact testで行いました。

  • ※1 層別因子:ECOG PS(0 vs. 1)、組織型(扁平上皮癌 vs. 非扁平上皮癌)、病期(ステージⅢ vs. Ⅳ vs. 再発)、性別、EGFR遺伝子変異(変異型 vs. 野生型 vs. 不明)、前殺細胞性化学療法数(1 vs. 2)、ICIの治療歴

患者背景

症例の内訳

アブラキサン群 ドセタキセル群
登録例数 252 251
有効性評価対象例数 252 251
安全性評価対象例数 245 249

治療の実施状況

対象患者
フォローアップ期間
中央値(月)
[四分位範囲]
15.0[6.9–27.4]

患者特性

症例数(%)

ドセタキセル群
(n=251)
アブラキサン群
(n=252)
年齢(歳) 中央値[範囲] 68[32‒87] 67[40‒83]
性別 男性 173(68.9) 174(69.0)
女性 78(31.1) 78(31.0)
ECOG PS 0 88(35.1) 85(33.7)
1 163(64.9) 167(66.3)
病期 20(8.0) 25(9.9)
189(75.3) 183(72.6)
再発 42(16.7) 44(17.5)
喫煙歴 あり 175(69.7) 190(75.4)
なし 76(30.3) 62(24.6)
組織型 扁平上皮癌 48(19.1) 50(19.8)
腺癌 193(76.9) 191(75.8)
その他 10(4.0) 11(4.4)
EGFR遺伝子変異 野生型 168(66.9) 171(67.9)
変異型 58(23.1) 57(22.6)
不明 25(10.0) 24(9.5)
前殺細胞性化学療法数 1 231(92.0) 229(90.9)
2 20(8.0) 23(9.1)
ICI治療歴 なし 211(84.1) 211(83.7)
あり 40(15.9) 41(16.3)

有効性

全生存期間:主要評価項目

ITT集団を対象とした全生存期間(OS)中央値は、アブラキサン群で16.2ヵ月[95%信頼区間:14.4‒19.0]、ドセタキセル群で13.6ヵ月[95%信頼区間:10.9‒16.5]でした。ドセタキセル群に対するアブラキサン群の層別HRは0.85[95.2%信頼区間:0.68‒1.07]であり、層別HRの95.2%信頼区間の上限が非劣性マージン1.33及び1.25を下回ったため、非劣性が検証されました。一方、優越性は検証されませんでした(優越性マージン:1.0)。

全生存期間〔Kaplan-Meier曲線〕

全生存期間〔Kaplan-Meier曲線〕

アブラキサン群
(n=252)
ドセタキセル群
(n=251)
OS中央値(月)
[95%信頼区間]
16.2
[14.4‒19.0]
13.6
[10.9‒16.5]
2年OS(%)
[95%信頼区間]
34.3
[28.5‒40.2]
30.5
[24.9‒36.2]
層別HR
[95.2%信頼区間]
0.85
[0.68‒1.07]
  • ※ 層別因子:ECOG PS(0 vs. 1)、組織型(扁平上皮癌vs. 非扁平上皮癌)、病期(ステージⅢ vs. Ⅳ vs. 再発)、性別、EGFR遺伝子変異(変異型 vs. 野生型 vs. 不明)、前殺細胞性化学療法数(1 vs. 2)、ICIの治療歴

全生存期間(サブグループ解析)

全生存期間(サブグループ解析)

無増悪生存期間:副次評価項目

ITT集団を対象とした無増悪生存期間(PFS)中央値は、アブラキサン群で4.2ヵ月[95%信頼区間:3.9‒5.0]、ドセタキセル群で3.4ヵ月[95%信頼区間:2.9‒4.1]であり、アブラキサン群で有意な延長が認められました(非層別HR=0.76、95%信頼区間:0.63‒0.92、p=0.0042、非層別Cox回帰モデル)

無増悪生存期間〔Kaplan-Meier曲線〕

無増悪生存期間〔Kaplan-Meier曲線〕

アブラキサン群
(n=252)
ドセタキセル群
(n=251)
PFS中央値(月)
[95%信頼区間]
4.2
[3.9‒5.0]
3.4
[2.9‒4.1]
非層別HR
[95%信頼区間]
0.76
[0.63‒0.92]

無増悪生存期間(サブグループ解析)

無増悪生存期間(サブグループ解析)

組織型別全生存期間、無増悪生存期間:主要・副次評価項目のサブグループ解析

扁平上皮癌のサブグループを対象とした全生存期間(OS)中央値は、アブラキサン群で14.5ヵ月、ドセタキセル群で9.7ヵ月、非扁平上皮癌のサブグループでは、アブラキサン群で17.5ヵ月、ドセタキセル群で14.7ヵ月でした。
扁平上皮癌のサブグループを対象とした無増悪生存期間(PFS)中央値は、アブラキサン群で4.2ヵ月、ドセタキセル群で2.9ヵ月、非扁平上皮癌のサブグループでは、アブラキサン群で4.5ヵ月、ドセタキセル群で3.8ヵ月でした。

組織型別全生存期間(サブグループ解析)

組織型別全生存期間(サブグループ解析)

扁平上皮癌 アブラキサン群
(n=50)
ドセタキセル群
(n=48)
OS中央値(月)
[95%信頼区間]
14.5
[10.0-18.7]
9.7
[5.7-14.5]
HR
[95%信頼区間]
0.67
[0.42-1.09]
  • ※Cox回帰モデル

組織型別全生存期間(サブグループ解析)

非扁平上皮癌 アブラキサン群
(n=202)
ドセタキセル群
(n=203)
OS中央値(月)
[95%信頼区間]
17.5
[14.6-19.3]
14.7
[11.3-18.2]
HR
[95%信頼区間]
0.87
[0.68-1.09]
  • ※Cox回帰モデル

組織型別無増悪生存期間(サブグループ解析)

組織型別無増悪生存期間(サブグループ解析)

扁平上皮癌 アブラキサン群
(n=50)
ドセタキセル群
(n=48)
PFS中央値(月)
[95%信頼区間]
4.2
[2.9-4.6]
2.9
[1.6-3.8]
HR
[95%信頼区間]
0.58
[0.38-0.89]
  • ※Cox回帰モデル

組織型別無増悪生存期間(サブグループ解析)

非扁平上皮癌 アブラキサン群
(n=202)
ドセタキセル群
(n=203)
PFS中央値(月)
[95%信頼区間]
4.5
[4.1-5.4]
3.8
[3.0-4.2]
HR
[95%信頼区間]
0.81
[0.66-1.00]
  • ※Cox回帰モデル

全奏効率:副次評価項目

全体集団における全奏効率(ORR)は、アブラキサン群29.9%、ドセタキセル群15.4%でした(p=0.0002、 Fisher’s exact test)。
扁平上皮癌のサブグループにおけるORRは、アブラキサン群30.4%、ドセタキセル群10.4%でした(p=0.0207、Fisher’s exact test)。
非扁平上皮癌のサブグループにおけるORRは、アブラキサン群29.7%、ドセタキセル群16.7%でした(p=0.0042、Fisher’s exact test)。

全奏効率

全奏効率

全奏効率(サブグループ解析)

全奏効率(サブグループ解析)

安全性

安全性解析対象集団における主な治療関連有害事象の発現は、以下のとおりでした。

主な治療関連有害事象発現状況一覧

症例数(%)

ドセタキセル群(n=249) アブラキサン群(n=245)
全体 Grade 3 Grade 4 全体 Grade 3 Grade 4
白血球減少症 225(90.4) 135(54.2) 29(11.6) 183(74.7) 60(24.5) 3(1.2)
好中球減少症 234(94.0) 63(25.3) 144(57.8) 198(80.8) 67(27.3) 30(12.2)
貧血 242(97.2) 12(4.8) 1(0.4) 239(97.6) 11( 4.5) 1( 0.4)
血小板減少症 93(37.3) 0 0 58(23.7) 0 0
発熱性好中球減少症 55(22.1) 52(20.9) 3(1.2) 5(2.0) 5(2.0) 0
疲労 143(57.4) 13(5.2) 0 137(55.9) 16(6.5) 0
食欲不振 130(52.2) 13(5.2) 0 95(38.8) 6(2.4) 0
間質性肺疾患 21(8.4) 6(2.4) 1(0.4) 23(9.4) 10(4.1) 0
末梢性感覚ニューロパチー 50(20.1) 2(0.8) 0 136(55.5) 24(9.8) 0
  • NCI CTCAE v4.0に基づく評価

有害事象による投与中止はアブラキサン群76例(31.0%)、ドセタキセル群60例(24.1%)に認められました。
治療関連死はアブラキサン群で2例(呼吸困難、肺臓炎それぞれ1例)、ドセタキセル群で2例(気管支肺出血、肺臓炎それぞれ1例)認められました。

  • ※ 有害事象の発現例数・発現率、投与中止に至った有害事象の事象名、重篤な有害事象の発現例数・事象名は論文中に記載なし。 DIの安全性情報を参照のこと。
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