胃癌

臨床成績 「警告・禁忌を含む注意事項等情報」等は最新の電子添文をご参照ください。

国内第Ⅲ相検証試験(J-0301試験:ABSOLUTE試験)1,2)

  • 1) フッ化ピリミジン系抗悪性腫瘍剤を含む初回化学治療に不応となった切除不能進行・再発胃癌患者を対象としたABI-007の3週ごと投与法とABI-007の毎週投与法と既存のパクリタキセル製剤(タキソール®注射液) の毎週投与法とのランダム化第Ⅲ相比較試験, 社内資料 ; 承認時評価資料
  • 2) Shitara, K. et al.: Lancet Gastroenterol. Hepatol., 2017, 2(4), 277-287

本試験の設計者である大鵬薬品工業株式会社は、本試験の実施及び結果解釈に寄与するデータ収集・解析に資金を提供しました。
大鵬薬品工業株式会社と本試験の実施責任医師及び筆頭著者には利益相反があります。利益相反の詳細については出典をご参照ください。

試験概要

フッ化ピリミジン系抗悪性腫瘍剤を含む初回化学治療に不応となった切除不能進行・再発胃癌患者を対象として、他のパクリタキセル製剤毎週投与群に対するアブラキサン3週ごと投与群及びアブラキサン毎週投与群の全生存期間(OS)について比較し、有効性及び安全性等について評価しました。

試験デザイン 多施設共同無作為化非盲検非劣性試験

試験デザイン 多施設共同無作為化非盲検非劣性試験

割付調整因子:前治療でのドセタキセル投与の有無、腹膜転移の有無、ECOG PS 0、1、2

評価項目

  • 主要評価項目:全生存期間(OS)
  • 副次評価項目:無増悪生存期間(PFS)、全奏効率(ORR)、治療成功期間(TTF)、病勢コントロール率、奏効期間、投与状況、安全性、QOL等

評価基準

  • 有効性:RECIST v1.1に従う
  • 安全性:CTCAE v4.03-JCOGに従う

解析方法

主要解析の対象集団をFASとし、カットオフを各群併せて527例以上の死亡イベントが確保された時点としました。OSの検定はHolmの方法により多重性を調整し、Cox比例ハザードモデルを用いて行いました。ハザード比の非劣性マージンを1.25としました。また、アブラキサンの非劣性が確認された場合、優越性を検定しました。OS及びPFSの生存曲線はKaplan-Meier法によって推定しました。重要な予後因子及び割付調整因子の効果を調整した治療群の効果の推定を比例ハザードモデルにより行いました。またサブグループ解析として、Cox比例ハザードモデルを用いてOS、PFSの部分集団解析を実施しました。

* Full Analysis Set

症例の内訳

アブラキサン3週ごと投与群 アブラキサン毎週投与群 他のパクリタキセル製剤群
登録例数 247 246 248
有効性評価対象例数 243 240 243
安全性評価対象例数 244 241 243
  • *FAS:Full Analysis Set

治療の実施状況

アブラキサン3週ごと投与群 アブラキサン毎週投与群 他のパクリタキセル製剤群
投与期間 中央値
[範囲]
72.0日
[1-806]
113.5日
[1-729]
101.0日
[1-749]
累積投与量 中央値
[範囲]
1399.00mg/body
[311.0-13125.0]
1890.00mg/body
[132.0-9177.0]
1380.00mg/body
[101.0-7680.0]
相対用量強度† 中央値
[範囲]
88.06%
[42.1-100.0]
83.79%
[32.6-100.0]
87.36%
[33.3-100.0]
  • † アブラキサン3週ごと投与群:絶対用量強度[mg/m2/週] / ((プロトコール規定用量[mg]×1 / 体表面積[m2]) / 3 [週]) × 100(%)
    アブラキサン毎週投与群:絶対用量強度[mg/m2/週] / ((プロトコール規定用量[mg]×3 / 体表面積[m2]) / 4 [週]) × 100(%)
    他のパクリタキセル製剤群:絶対用量強度[mg/m2/週] / ((プロトコール規定用量[mg]×3 / 体表面積[m2]) / 4 [週]) × 100(%)

患者特性(FAS)

症例数(%)

アブラキサン3週ごと投与群
(n=243)
アブラキサン毎週投与群
(n=240)
他のパクリタキセル製剤群
(n=243)
性別 男性 178(73.3) 178(74.2) 176(72.4)
女性 65(26.7) 62(25.8) 67(27.6)
年齢 中央値(歳) 66 67 65
<65歳 101(41.6) 95(39.6) 115(47.3)
≧65歳 142(58.4) 145(60.4) 128(52.7)
ECOG PS 0 167(68.7) 168(70.0) 168(69.1)
1 72(29.6) 70(29.2) 71(29.2)
2 4(1.6) 2(0.8) 4(1.6)
腹水* 123(50.6) 127(52.9) 139(57.2)
少量 93(38.3) 79(32.9) 65(26.7)
中等量 19(7.8) 27(11.3) 30(12.3)
大量 8(3.3) 7(2.9) 9(3.7)
組織型 Diffuse 140(57.6) 137(57.1) 132(54.3)
Intestinal 103(42.4) 103(42.9) 110(45.3)
胃切除歴 111(45.7) 131(54.6) 132(54.3)
腹膜転移 131(53.9) 131(54.6) 130(53.5)
転移臓器数 <2 103(42.4) 114(47.5) 108(44.4)
≧2 140(57.6) 126(52.5) 135(55.6)
ドセタキセル治療歴 22(9.1) 24(10.0) 24(9.9)
前化学療法歴 フッ化ピリミジン系抗悪性腫瘍剤単剤療法 69(28.4) 97(40.4) 86(35.4)
2剤併用化学療法 157(64.6) 126(52.5) 139(57.2)
3剤併用化学療法 17(7.0) 17(7.1) 18(7.4)
前化学療法継続期間 <6ヵ月 96(39.5) 112(46.7) 90(37.0)
≧6ヵ月 146(60.1) 128(53.3) 153(63.0)
前化学療法中止事由 術後補助化学療法中の再発 43(17.7) 66(27.5) 66(27.2)
初回化学療法不応 200(82.3) 174(72.5) 177(72.8)
  • *無:腹水が画像診断で確認されていない、少量:腹水が骨盤腔に限定されている、大量:腹水が骨盤から上腹部に広がっている、中等量:ここで規定されている以外の腹水の変異

全生存期間:主要評価項目

アブラキサン毎週投与群の他のパクリタキセル製剤群に対するハザード比は0.97[97.5%信頼区間:0.76-1.23]とハザード比の97.5%信頼区間の上限が非劣性マージン1.25を下回ったため非劣性が検証されました(非劣性検定:片側 p=0.0085)。

全生存期間(Kaplan-Meier曲線)

全生存期間(Kaplan-Meier曲線)

アブラキサン3週ごと投与群
(n=243)
アブラキサン毎週投与群
(n=240)
他のパクリタキセル製剤群
(n=243)
OS中央値(月) 10.3
[95%信頼区間:8.7-11.4]
11.1
[95%信頼区間:9.9-13.0]
10.9
[95%信頼区間:9.4-11.8]
vs.他の
パクリタキセル製剤群
HR*1 1.06
[95%信頼区間:0.87-1.31]
0.97
[97.5%信頼区間:0.76-1.23]
p*2† 0.062 0.0085
  • *1 Cox比例ハザードモデル
  • *2 非劣性検定:片側p
  • †治療群に対するp値の算出にはドセタキセルによる治療の有無、腹膜転移の有無、ECOG PS(0、1、2)を共変量とするCox比例ハザードモデルを用いた

部分集団因子別にみた全生存期間(サブグループ解析)

フォレストプロット(FAS)

アブラキサン3週ごと投与群 vs. 他のパクリタキセル製剤群

アブラキサン毎週投与群 vs. 他のパクリタキセル製剤群

無増悪生存期間:副次評価項目

アブラキサン毎週投与群の他のパクリタキセル製剤群に対するハザード比は0.88[95%信頼区間:0.73-1.06]、アブラキサン3週ごと投与群の他のパクリタキセル製剤群に対するハザード比は1.03[95%信頼区間:0.85-1.24]でした(p=0.176[両側、log-rank検定]、p=0.778[両側、log-rank検定])。

無増悪生存期間(Kaplan-Meier曲線)

無増悪生存期間(Kaplan-Meier曲線)

アブラキサン3週ごと投与群
(n=243)
アブラキサン毎週投与群
(n=240)
他のパクリタキセル製剤群
(n=243)
PFS中央値(月) 3.8
[95%信頼区間:3.5-4.4]
5.3
[95%信頼区間:4.0-5.6]
3.8
[95%信頼区間:3.7-3.9]
vs.他の
パクリタキセル製剤群
HR 1.03
[95%信頼区間:0.85-1.24]
0.88
[95%信頼区間:0.73-1.06]
p
log-rank検定
0.778 0.176

部分集団因子別にみた無増悪生存期間(サブグループ解析)

フォレストプロット(FAS)

アブラキサン3週ごと投与群 vs. 他のパクリタキセル製剤群

アブラキサン毎週投与群 vs. 他のパクリタキセル製剤群

全奏効率:副次評価項目

全奏効率(ORR)はアブラキサン3週ごと投与群25.3%[95%信頼区間:18.6-33.1]、アブラキサン毎週投与群32.7%[95%信頼区間:25.2-40.8]、他のパクリタキセル製剤群24.3%[95%信頼区間:18.0-31.4]でした。

症例数(%)

アブラキサン3週ごと投与群 アブラキサン毎週投与群 他のパクリタキセル製剤群
症例数
(全奏効率評価対象例)
150 150 169
全奏効率(ORR) 38(25.3)
[95%信頼区間:18.6–33.1]
p=0.897
49(32.7)
[95%信頼区間:25.2-40.8]
p=0.106
41(24.3)
[95%信頼区間:18.0-31.4]
完全奏効(CR) 2(1.3) 4(2.7) 3(1.8)
部分奏効(PR) 36(24.0) 45(30.0) 38(22.5)
安定(SD) 62(41.3) 63(42.0) 78(46.2)
進行(PD) 49(32.7) 37(24.7) 50(29.6)
評価不能(NE) 1(0.7) 1(0.7) 0(0.0)
  • RECIST v1.1による評価
  • *全奏効率は完全奏効、部分奏効を含む
  • †対他のパクリタキセル製剤群(Fisher’s exact test)

各群の最大腫瘍縮小率

Waterfall プロット(全奏効率評価対象例を対象)

Waterfall プロット(全奏効率評価対象例)

安全性(副作用)

切除不能進行・再発胃癌2次治療例を対象とした国内第Ⅲ相試験(J-0301試験)における副作用の発現率は、アブラキサン3週ごと投与群99.6%(243/244例)、アブラキサン毎週投与群98.8%(238/241例)、他のパクリタキセル製剤群100%(243/243例)でした。
いずれかの群で発現率が10%以上であった副作用は以下の通りでした。

国内第Ⅲ相試験(J-0301試験)における副作用発現状況一覧(いずれかの群で発現率10%以上)

症例数(%)

副作用*1 アブラキサン3週ごと投与群
(n=244)
アブラキサン毎週投与群
(n=241)
他のパクリタキセル製剤群
(n=243)
全体 Grade 3*2以上 全体 Grade 3*2以上 全体 Grade 3*2以上
安全性評価対象例数 244 241 243
副作用発現 243(99.6) 194(79.5) 238(98.8) 138(57.3) 243(100.0) 108(44.4)
血液及びリンパ系障害
貧血*3 36(14.7) 15(6.1) 55(22.8) 19(7.9) 39(16.0) 16(6.6)
発熱性好中球減少症 30(12.3) 30(12.3) 7(2.9) 7(2.9) 2(0.8) 2(0.8)
胃腸障害
便秘 32(13.1) 17(7.1) 15(6.2)
下痢 30(12.3) 2(0.8) 38(15.8) 1(0.4) 30(12.3) 2(0.8)
悪心 46(18.9) 3(1.2) 37(15.4) 3(1.2) 36(14.8) 1(0.4)
口内炎 41(16.8) 5(2.0) 42(17.4) 1(0.4) 36(14.8)
嘔吐 22(9.0) 2(0.8) 16(6.6) 26(10.7)
一般・全身障害及び投与部位の状態
疲労 55(22.5) 9(3.7) 46(19.1) 4(1.7) 45(18.5) 4(1.6)
倦怠感 64(26.2) 1(0.4) 57(23.7) 1(0.4) 55(22.6) 1(0.4)
発熱 25(10.2) 14(5.8) 14(5.8)
臨床検査
リンパ球数減少 27(11.1) 17(7.0) 27(11.2) 13(5.4) 23(9.5) 5(2.1)
好中球数減少 199(81.6) 158(64.8) 158(65.6) 99(41.1) 121(49.8) 71(29.2)
白血球数減少 156(63.9) 77(31.6) 137(56.8) 53(22.0) 114(46.9) 38(15.6)
代謝及び栄養障害
食欲減退 94(38.5) 21(8.6) 63(26.1) 15(6.2) 50(20.6) 9(3.7)
筋骨格系及び結合組織障害
関節痛 94(38.5) 5(2.0) 30(12.4) 25(10.3)
筋肉痛 86(35.2) 9(3.7) 39(16.2) 31(12.8)
神経系障害
味覚異常 35(14.3) 38(15.8) 30(12.3)
末梢性感覚ニューロパチー 207(84.8) 49(20.1) 159(66.0) 6(2.5) 156(64.2) 6(2.5)
皮膚及び皮下組織障害
脱毛症 197(80.7) 199(82.6) 191(78.6)
そう痒症 27(11.1) 10(4.1) 7(2.9)
発疹 33(13.5) 1(0.4) 22(9.1) 16(6.6)

社内集計

  • *1:MedDRA/J v18.1 *2:CTCAE v4.03-JCOGに基づく評価 *3:鉄欠乏性貧血、ヘモグロビン減少を包括

重篤な副作用は、計81例に発現し、アブラキサン3週ごと投与群40例(16.4%)、アブラキサン毎週投与群23例(9.5%)、他のパクリタキセル製剤群18例(7.4%)でした。各群で3例(1.2%)以上に発現した内訳は、アブラキサン3週ごと投与群で発熱性好中球減少症21例(8.6%)、好中球減少*410例(4.1%)、食欲不振*57例(2.9%)、肺炎4例(1.6%)、アブラキサン毎週投与群で発熱性好中球減少症、食欲不振*5各6例(2.5%)、肺炎4例(1.7%)、他のパクリタキセル製剤群は肺炎、食欲不振*5各5例(2.1%)でした。副作用による中止は、アブラキサン3週ごと投与群41例(16.8%)、アブラキサン毎週投与群17例(7.1%)、他のパクリタキセル製剤群12例(4.9%)でした。主な副作用による中止は末梢性感覚ニューロパチーで、アブラキサン3週ごと投与群21例、アブラキサン毎週投与群6例、他のパクリタキセル製剤群3例でした。副作用による死亡は、アブラキサン3週ごと投与群1例(肺炎)、アブラキサン毎週投与群2例(発熱性好中球減少症/肺炎、発熱性好中球減少症/敗血症性ショック)、他のパクリタキセル製剤群1例(間質性肺疾患/呼吸不全)でした。

  • *4 好中球減少:好中球数減少 *5 食欲不振:食欲減退
大鵬薬品