Close-up 抗がん剤開発

Close-up 抗がん剤開発

世界のがん治療に貢献する抗がん剤開発チャレンジの系譜

  • 抗がん剤の開発はラトビア共和国の首都リガにある有機化学合成研究所で合成された「フトラフール」から始まりました。

大鵬薬品の抗がん剤の歴史は、ラトビア共和国での「フトラフール」との出会いから始まった

1969年、初代社長の小林幸雄は、当時急激に需要が増え始めた不定愁訴改善薬「パントクリン注」の商談で旧ソ連を訪れました。商談の傍ら、寸暇を惜しんで製薬関連の視察を行った小林は、モスクワのがん研究所である注射剤のアンプルを目にします。それは、抗がん剤の新薬5-フルオロウラシル(5-FU)の誘導体※1「フトラフール」でした。小林は直感で大きな可能性を感じ、その場で日本国内での臨床試験実施を決意しました。帰国後すぐに研究所内に「制がん班」を設け研究を開始。基礎研究において効果を確認した後、臨床試験へと移りました。しかし、最初の臨床成績報告会では携わった研究者たちから効果に対する否定的な報告が相次ぐなど満足のいく研究結果が得られませんでした。ただ、唯一乳がん患者に対する有効例の発表があり、その有効例にいちるの望みを託し研究を継続。その結果、「フトラフール」は肝臓で分解され活性化することで5-FUへ変化すること、低濃度でも長時間がん細胞と接触することで十分な抗がん作用を発揮することが解明され、当時世界的に汎用されていなかった経口抗がん剤の開発へと大きく舵を切りました。その時、1972年4月、直感から切り拓いた可能性は現実へと確実に動き出しました。

小さな可能性の芽を結実させがん治療の概念を変える

  • フトラフール注400mg発売 パンフレット
    フトラフール注400mg発売 パンフレット

「フトラフール」は、がん細胞の中に“偽のパーツ”を紛れ込ませて細胞分裂をできなくする代謝拮抗剤で、生体内で徐々に“偽のパーツ”の一つである5-FUに代謝され薬効を示す薬剤です。大鵬薬品では、「フトラフール」の長時間がん細胞に接触し効果を発揮するという特徴に着目し、経口投与できる抗がん剤として1974年に国内での販売を開始。「フトラフール」は、従来の抗がん剤とは異なり“経口で長期投与ができる”という特徴から外来治療を可能とし、後に“術後補助化学療法”の概念を定着させました。

1974年

「フトラフールカプセル200mg」と「フトラフール注400mg」発売

  • 1974年
「フトラフールカプセル200mg」と
「フトラフール注400mg」の商品画像
    写真は発売当時のもの

より高い効果を目指し、飽くなきチャレンジを続ける

それから10年後、「フトラフール」に“ウラシル”を配合することにより、5-FUの濃度をさらに長時間持続させることに成功し、1984年に発売したのが「ユーエフティ」です。「ユーエフティ」ではさまざまながん腫を対象とした臨床試験が実施され、特に術後補助化学療法において数多くのエビデンスが創出されました。臨床で得られたこれらのエビデンスをもとに、「ユーエフティ」は抗がん剤の主要な選択薬として使用されるようになりました。この「ユーエフティ」の成功体験から、さらに高い薬効を期待した研究が進められ、“ウラシル”よりも 5-FUの濃度をより長時間持続させる“ギメラシル”と、消化管などへのダメージを抑える“オテラシルカリウム”を開発。「フトラフール」を主薬に、この2種類の新規化合物を配合した「ティーエスワン」が生まれました。「ティーエスワン」は、胃がん患者を対象とした臨床試験において高い奏効率を示したことから、厚生労働省(当時は厚生省)の優先審査品目として1999年に承認を受け、発売。さらに結腸・直腸がんに対し、当時世界的な標準療法として認められていた注射剤の5-フルオロウラシルおよびレボホリナートの併用療法(5-FU/LV)と、「ユーエフティ」および経口の還元型葉酸製剤である「ユーゼル錠」の併用療法との比較試験で同等の効果が認められ、日米でブリッジング試験を実施して、2 0 0 3 年に「ユーゼル錠」を発売しました。

1984年

「ユーエフティ配合カプセルT100」発売

  • 1984年
「ユーエフティ配合カプセルT100」の商品画像
    写真は発売当時のもの

1999年

「ティーエスワン配合カプセルT20・T25」発売

  • 1999年
「ティーエスワン配合カプセルT20・T25」の商品画像
    写真は発売当時のもの

薬を大切に育て新たな可能性を創り出す

「ユーエフティ」については、2004年に肺がんにおける術後補助化学療法のデータが、世界的に権威のある医学雑誌The New England Journal of Medicine(NEJM)に掲載されました。また、その他にも胃がん・大腸がん・乳がんなどにおける術後補助化学療法のデータが次々と公表されています。「ユーエフティ」同様、「ティーエスワン」もさまざまながん腫においてその有効性が示され、NEJMをはじめとする世界の医学雑誌で紹介されています。「ティーエスワン」は胃がんを中心に、大腸がん・肺がん・膵がん・乳がん・頭頸部がんなどにおいてエビデンスが構築されており、各種ガイドラインにも掲載され、がん治療に貢献しています。今なお多くの医療・研究機関により、優れた臨床成績が数々の医学誌で報告されるなど、がん治療の進化とともに「ティーエスワン」の可能性は拡がっています。

2003年

「ユーゼル錠25mg」発売

  • 2003年
「ユーゼル錠25mg」の商品画像
    写真は小型化変更品

2009年

「ティーエスワン配合顆粒T20・T25」発売

  • 2009年
顆粒剤「ティーエスワン配合顆粒T20・T25」の商品画像

がん治療の今を支え、そして未来を切り拓く

近年では、より一層患者さんのQOLを意識した、がんのトータルケアを目指した研究開発も行っています。がん患者さんが服用しやすい剤形を開発するとともに、がん化学療法に伴う悪心・嘔吐を抑制する「アロキシ」やがんの痛み(突出痛)に対する治療薬「イーフェン」を発売するなど、がん治療にとどまらず、患者さんのQOLの向上にも貢献できるよう努めています。2009年に旧万有製薬のつくば研究所を買収して、社内の創薬機能をつくばエリアに集約。最先端の技術を駆使した新しいタイプの抗がん剤の開発に積極的に取り組んでいます。また、世界70カ国以上で承認されている抗がん剤「アブラキサン」を導入。国内で開発※2を進め、2010年に乳がんの治療薬として発売し、その後、胃がん、非小細胞肺がんおよび治癒切除不能な膵がんの効能追加の承認を取得しています。

2010年

「アロキシ静注0.75mg」発売

  • 2010年
「アロキシ静注0.75mg」の商品画像

「アブラキサン点滴静注用100mg」発売

  • 2010年
「アブラキサン点滴静注用100mg」の商品画像

2013年

「ティーエスワン配合OD錠T20・T25」発売

  • 2013年
「ティーエスワン配合OD錠T20・T25」の商品画像

2014年

「ロンサーフ配合錠T15・T20」発売

  • 2014年
「ロンサーフ配合錠T15・T20」発売の商品画像

2015年

「ヨンデリス点滴静注用0.25mg・1mg」発売

  • 2015年
「ヨンデリス点滴静注用0.25mg・1mg」発売の商品画像

日本発の新薬を世界の患者さんのために

日本国内における胃がんの標準治療薬となった「ティーエスワン」は、アジアに加え、欧州においても2011年に承認後販売しています。抗悪性腫瘍剤「ロンサーフ」は、進行・再発の結腸・直腸がんの治療薬として2014年に世界に先駆けて国内で発売。翌年には、米国においても販売を開始しました。本剤は、大鵬が米国で初めて承認を取得した製品です。欧州においては、2016年に欧州委員会(EC)より承認を取得し、順次販売を開始しています。

大鵬薬品は、半世紀にわたる抗がん剤開発の歴史の中で、がん化学療法に関する多くのエビデンスを確立してきました。その豊富な経験を力に変え、これからも日本をはじめ世界のがん患者さんに貢献できる新薬を開発してまいります。

※1誘導体:ある化合物の分子の一部が変化してできた化合物。 

※2:大鵬薬品は、日本における開発販売の権利を有しています。